大学の産学連携組織で大学発ベンチャーの支援を行いながら2008年3月に無事QBS(九大ビジネススクール)を修了しました。そして、2010年4月からは、産学連携的な会社の代表取締役社長に就任。2014年6月に任期満了により退任し顧問として活動しています。大学まわりの情報や産学連携に関する情報を独自の視点で発信していきたいと考えています。

2010年11月08日

IPO激減時代のベンチャー経営と資金調達

先週末の土曜日(11月6日)は昼前から福岡空港に向かいました。

青山学院大学大学院社会情報学研究科の公開講座「IPO激減時代のベンチャー経営と資金調達」を聴講するためです。

青学って、福岡にあったっけ?と首を傾げた方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことありません。

IPO激減時代のベンチャー経営と資金調達
青学は、やはり東京「青山」にあります(別のキャンパスもありますが)。

そうです。この講義を拝聴するために、東京に向かったのでした。。。

この講義は「@pinahirano 」こと、インフォテリアの平野さんが青山学院大学大学院 社会情報学研究科の集中講座「技術系ベンチャー経営の戦略と実践」の一部として開催される公開講座です。

そもそものキッカケは以下のとおり

twitter上で、この講座のことを知った私が以下のとおりつぶやきました。

おおっ参加したいなーRT @pinahirano: 教室確保完了!まだ申込み可能になりました。RT @pinahirano 11/6に青学の私の講座の中で行う公開講座「IPO激減時代のベンチャー経営と資金調達」の申込みが殺到し教室を変更講師の @kazmura @isologue

このつぶやきに対し @pinahiranoさんが、

@akarisaka きなっせ:)

コメントされたことから始まったのでした(笑)。

日本では稀有な存在であるガチンコキャピタリストであるNTVPの村口さん( @kazmura )さんに加え、以前からフォローさせていただいている@isologue こと、磯崎哲也事務所の磯崎さんが登壇されるということで、急遽福岡から参加することにしたのです。

磯崎さんといえば、先日出版された「起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと」が、amazon上で欠品になるほど話題になっていますよね。

IPO激減時代のベンチャー経営と資金調達
ということで、久しぶりの渋谷で恥ずかしながら青学への道を迷ってしまい、講義開始の14:45ギリギリに会場に到着。平野さんのオリエンテーションでスタートしました。

まずはNTVPの村口さんの講義。以下、いろいろ書いていると終わらないので、私のメモをベースにまとめてみました。

++++++++++++++++++++++++++++
<PDCAサイクルの問題点>

PDCAサイクルの前提は計画がありき
シリコンバレーではP(計画)ありきではない
人間様の計画外のことが必ず起きる→PDCAでは対応できない(PDCAはあくまでもツール)
マニフェストの政治万能論は必ず終わる

<PDCAサイクルは機能したのか?>

どんなに精緻に計画しても、予期せぬ出来事が必ず起きる
対応にしたがって必ず躓く
マニフェスト経営は、不合理かつ不効率である
事業計画は大事だけど、役に立たないということを知らないといけない
PDCAはある条件を満たした特殊状況でのマネージメント道具(ツール)に過ぎない

<計画経営は、途中必ず失敗する>

初期の事業計画は必ず失敗する
商品は計画とおりになど完成しない
顧客進化ライフサイクルの学習が必要
キャズムは簡単に越えられない
資本は必ず尽きてくる
まじめな起業家は必ず計画未達を説明したい→計画だけにこだわっていてはゲームオーバー

<なぜ日本のベンチャーはダメなのか>

自分で制御できる<費用の支出>は、計画可能
売上は、他人である顧客候補が意思決定するので、原理的に計画不能
売上項目は、計画ではなく、見通しである
日本のVCは、単なる売上利益見通しを、事業計画だと間違えている。
商品も未完成、顧客もはっきりしない事業の売上見通し→計画統制(予算実績管理)しても無意味なばかりか、経営に有害である。


<OODAループ>

観察(Observation)、情報整理分析(Orient)
意思決定(Decision) 行動(Action)

これが自然な、学習対応行動のベースである。→起業経営(ビジネスもモデル未完成段階)もかくあるべし

<JCSサイクル>
参加(Join) 貢献(Contribute)シェア(Share)資本(株式)による資金調達の基本

<ベンチャー四つ必要なこと>

起業家精神 マネジメント(ヒト金モノのマネジメント) イノベーション 完璧なオペレーション
↓ ↓ ↓
この四つをバランスしないと起業は成り立たない
起業家精神は個人にしかやどらない(起業家精神にあふれる組織なんて作れない)

<起業家が学ぶべき三つ>

JCSサイクルを人生指針として学び
OODAループを、学習対応行動様式として身につけ
PDCAで管理していく


<山にトンネルを掘る堀り方>

こっちから掘っていく
あっちから掘っていく
両方から掘っていく
ヘリコプターから観察して、時間とともに学習し、掘るのが上手になっていく起業家になる
++++++++++++++++++++++++++++

いやはや刺激的な言葉が並びます。。。この中でも、非常に勉強になったのが、PDCA神話の崩壊です。

PDCAという言葉は、社会人の方には馴染みの言葉で、私も新入社員時代(リコー)にまずは習いました。

仕事においてPlan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(行動)のサイクルをまわしていくことが重要だということです。

これは、仕事をするにおいて基本なフレームワークの一つであることは間違いありません。ただ、あくまでツールであり、日々の業務管理、改善作業、大きな組織のマネジメントの一部に有効ですが、すべてに有効ではないということです。特に、現在の経済状況、日々環境が変わる時代には、このサイクルを回す時間がなく、意思決定をしなければいけないことが、ベンチャーのマネジメントには頻繁に発生します。

村口さんは、その事例についてDeNAのケース(システムトラブル)で説明されました。

そういった状況において、PDCAというツールにこだわりすぎていると、ベンチャーの経営に向かないだけでなく、悪影響を及ぼすということです。それにもかかわらず、大企業でPDCA神話に洗脳された方々がPDCAを押しつけると・・・うまくいかないということです。
これは、現在の環境では、大企業・国家の危機管理でも一緒なのかもしれませんね。

それに対し、OODAループが日々状況が変化する環境において、有効であるということです。ここでは省略しますが、OODAループとは、米国の軍のマネジメント手法として開発されたもののようです。⇒こちら

休憩をはさみ、磯崎さんの講義がスタート。こちらも同様メモをまとめてみました。

++++++++++++++++++++++++++++
<ベンチャーには、「情報」「人」が不足している。>

専門家といわれる人もベンチャーとって大切なことを知らない
「生態系」全体を発達させる必要がある。


<ベンチャーにとって一番大切なこと>
ファイナンスではない
起業家精神(アントレプレナーシップ)
アニマル・スピリッツ
投資=「不確実な未来への挑戦」の根源
頭がいいだければダメ
ベンチャーはお金を借りてはいけない、資本(株式)で資金を調達する

<日本は、「起業家に冷たい国」なのか?>

誰のためのビジネスか?
↓ ↓
株式の資金調達に必要なのは「人」
株式とて、資金が出せるのは「イケてる」ビジネスにだけ。
相談するのであれば、実際に資金調達したことがある人に相談したほうがいい

<ベンチャーの資金調達のポイント>
日本の(イケてる)ベンチャーは、「売り手市場」→資金は大量に存在する。
悪くいえば「甘やかされる傾向」
資本政策は後戻りできない!「重要」
今後バイアウトの視点が重要になる。
++++++++++++++++++++++++++++
磯崎さんの講義については、先般出版された本に詳細が書かれています。



中でも一番ためになったのが、<ソーシャルグラフと事業の関連>です。

ベンチャーではネットワークが重要と言われます。ただ、それを説明するための明確な<鍵>を今まで聞いたことがありませんでした。また、そのために、ネットワーク=異業種交流会といった感じで日本では認識されており、やたら「ネットワーク」信奉者が多いというのが私の印象です。

それを、磯崎さんは本の中で、ファイナンスの視点でソーシャルグラフと財務諸表の繋がりを説明されています。詳細については、本をご購入くださいね(笑)。

ということで、非常に刺激的な講義を受け、最終便で帰福したのでした・・・。

平野さん、村口さん、磯崎さん、ありがとうございました!


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この記事へのコメント
こんばんは。突然失礼いたします。
私も実はこの講座急遽参加したのです。面白かったですよね。
でも九州からいらっしゃったというお話をお聞きしたときは驚きました。
行動力に感服しました。
Posted by @tetsuya_mr at 2010年11月08日 21:03
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