九州は「一つ」か「一つずつ」か?

坂本 剛

2013年11月11日 11:44

先週末の11月9日(土)は、大学改革シンポジウム「社会の課題解決と大学教育・研究の融合」と合わせて、今年度もチューターを務めた九州大学地域政策デザイナー養成講座の政策提言発表会が開催されました。

「人口減少下の新たな成長のかたち」~ 現下の国際情勢と九州のビジネス戦略 ~ 

という大テーマのもと、

① 九州発・新国富論
② 地域の国際ビジネス戦略
③ 新たな官民連携

といった具体的なテーマについて、学生・社会人がチームを編成し、約半年にわたる講座・ワークショップおよび自主的な勉強会を経て提言をまとめました。



発表会の詳細はここでは述べませんが、この講座に参加した全ての方に、お疲れさまでした、と言いたいですね。特に社会人の方は、仕事を抱えながらプライベートの時間の多くを提言とりまとめのために費やされたのではないでしょうか。その努力に敬意を表したいと思います。

一方、このような提言にあたり、いつも強調されるのが「九州は一つ」ということです。

道州制の話題になると、真っ先にその実施候補地に挙がるのが「九州」です。では、本当に九州は一つなのでしょうか?

今回の提言の中に、九州が一体となり農産物の移出を支援する地域商社の創出といったプランがありました。プレゼン後の質疑応答では、今迄にも様々な提言が行われてきたにも関わらず、各県同士の思惑の相違によりなかなか連携がうまくいっていないとのコメントがありました。

イチゴを例にとると、福岡県には「あまおう」という有名なブランドイチゴがあります。一方、佐賀県は「さがほのか」といったブランドイチゴを開発し、県内の生産者の育成に力を入れています。それらを「統一ブランド」にして海外に移出するのはなかなか難しいものがあるということは容易に推測できます。

それに対し、香港など海外のマーケットからは、九州の農産物を売り込みたいのならば「窓口の一本化」「九州一体となったブランド」の提案をしてほしいという要望が挙がっているようです。相手は、ビジネスにおいて九州を「一つ」にしてほしいと思っているのです。

また、九州は一つといいながら、各地域・県ごとに言葉や文化はそれぞれで「一つずつ」です。

九州だとお酒は焼酎というイメージがあるかもしれませんが、北部九州は日本酒文化で南部九州(鹿児島、宮崎)は焼酎。特に久留米市城島は、日本酒の三大酒蔵と言われています。

ラーメンも博多(長浜)、久留米、熊本、鹿児島と同じとんこつでも全く別ものです。タテの話ばかりしていますが、ヨコの大分、長崎、佐賀も、それぞれ素晴らしい農産物、食材、文化があります。

私は福岡市に住んでいますが、鹿児島や宮崎には、今まで数回した行ったことがありません。むしろ、東京や大阪のほうが知人も多いし、親近感がわきます。熊本とはなぜだか友人・知人の繋がりが深いのですが、歴史的にみると、熊本と福岡は「九大」の誘致合戦などのこともあり、あくまでも個人的な意見ですが、自治体同士であまりいい関係にあるとは感じません。

といった具合に、九州に住んでいると、九州が一つといった感覚はほどんどないのが現実なのです。しかしながら、人口減少が始まっている日本において、地域の発展・成長を考えるのであれば「九州を一体化」していくことも非常に重要なポイントといえます。

九州は「一つ」なのか「一つずつ」なのか、本当に深い話です。

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